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【新聞記事より】「遺伝が原因」5%にすぎず
2019/07/1
がんは遺伝子の損傷による細胞の不死化が原因となる「遺伝子の病気」です。しかし、遺伝はがんの発生要因の5%程度にすぎませんから、遺伝する病気という見方は誤解です。たしかに、生殖細胞の遺伝子の異常が代々受け継がれて、特定のがんが発生しやすい家系も存在します。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんもその一人で、遺伝子検査の結果、BRCA1という遺伝子の異常が発見されたため、乳腺組織と卵巣を予防的に切除しています。すべての遺伝子は父母から1つずつ受け取りますが、母親から受け継いだBRCA1遺伝子に異常があったようです。彼女の身体のすべての細胞は、異常なBRCA1遺伝子をもった卵子と正常な精子が合体した受精卵から作られましたから、血液の細胞を採るだけでこの遺伝子の異常が分かったのです。
こうした家族性腫瘍はがん全体の5%にすぎません。ほとんどの“遺伝子の傷”は身体の細胞(体細胞)に後天的に生じるものです。どの遺伝子が傷つくかはランダムに起こりますので、がん運の要素も多い病気と言えます。禁煙など生活習慣の改善で遺伝子変異のリスクは大きく減らすことはできますが、完璧な生活でもがんを完全に防ぐことはできません。がんは運にも左右される病気です。ある意味、がんも人生の一部だと言えるでしょう。
一方、分子生物学の進歩によって、発がんの原因となる遺伝子変異の解明が進んでいます。がんのほとんどは、体細胞の遺伝子の偶然的な損傷によって発生した不死細胞が10~30年といった年月をかけて増殖したものです。遺伝性のがんを除くと、全身の細胞の遺伝子には異常はありませんから、発がんの原因遺伝子の特定にはがん細胞を摂取する病理診断が必要になります。なお、がん細胞にできた突然変異は次の世代に遺伝しません。
がん細胞の遺伝子異常を網羅的に調べ、個々のがんに適した治療を行う”がんゲノム医療”が始まろうとしているそうです。期待しましょう!